電波を盗め!

個人的な考えですが、最も「美しい」犯罪は電波ジャックだと思います。

電波ジャックはそれ自体が大変な技術が必要であり、その上「乗っ取り」を行うには中身も必要です。

しかも、それだけの技術を使っても乗っ取りが可能な時間は限られています。また、電波ジャックは比較的重い犯罪です。

そうしたリスクを背負ってわずかな時間だけ放送を乗っ取るこの犯罪に、個人的にはロマンを感じます。フィクションにしばしば登場するのも、そういった側面からかもしれません。

一方、現実に電波ジャックが実行された例は非常に少ないです。しかし実例が全くないわけではなく、歴史上何度か、こんな事態が発生しているのです。

日常が異常に変わる犯罪、電波ジャックの実際の映像を集めました。

キャプテン・ミッドナイト事件

1986年 / アメリカ / ジョン・R・マクドゥーガル

1986年4月26日、アメリカのケーブルテレビ局HBOで映画「コードネームはファルコン」を放送中に衛星電波が乗っ取られ、カラーバーを背景に競合局の視聴を勧める「キャプテン・ミッドナイト」を名乗るメッセージが3分間ほど放送された事件。エンジニアで実業家のJohn R. MacDougallが逮捕されました。マクドゥーガルはHBOの料金に不満があって犯行に及んだそうです。「キャプテン・ミッドナイト」は犯行に及ぶ前に見ていた映画「On the Air Live with Captain Midnight」が由来とのこと。ちなみに、現在マクドゥーガルは自分のHPを開設し、犯行について誇らしげに語っています。

マックス・ヘッドルーム事件

1987年 / アメリカ / 犯人不明

1987年11月22日、シカゴのTV局WGNとWTTWで、番組の放送中に当時の人気ドラマ「マックス・ヘッドルーム」に登場する同名のキャラクターの仮面をかぶった男が、支離滅裂な言動をとる映像が放送される事件が起こりました。一度目はニュース番組のスポーツコーナーで、二度目はドラマ「ドクター・フー」の放送中に起こり、ニュース番組の方は局側の機転で内部の信号を切り替えたためすぐに終わりましたが、二度目の電波ジャックでは2分間に渡って男の奇妙な動きが放送され続けてしまいました。本事件最大の特徴は、犯人の行動に主張性が全く感じられない事です。映像内で男は視聴者やTV局を罵ったかと思えば突然歌いだす、叫ぶなどし、しまいには女性の前に尻を出し、ハエ叩きで叩かれ悶絶するなど一貫性のない行動を繰り返します。通常電波ジャックと言えば政治的主張の手段として行われることが多いですが、彼(彼ら)には何の目的も感じられず、完全な愉快犯に思えます。前述のキャプテン・ミッドナイト事件と共に電波ジャックの代表的事件として挙げられる、極めて知名度の高い事件です。なお、犯人は未だ捕まっていません。

レバノン侵攻

2006年 / レバノン / イスラエル軍

2006年7月に、イスラエルとレバノンの国境付近でイスラエル軍とイスラム武装組織ヒズボラとの戦闘が発生、大規模な紛争に発生しました。この時イスラエル軍はヒズボラの支配地域に情報戦を仕掛けました。その一つが2006年7月27日ごろ発生した電波ジャックです。ヒズボラはアル・マナールという衛星放送局を保有していますが、そこの電波を乗っ取り、ヒズボラの議長ハサン・ナスルッラーフを批判する映像や、ヒズボラ戦闘員の死体や戦闘の映像などを流しました。ここでは、発掘できた2つの映像を紹介します。安っぽいつくりがいい味出してますが、乗っ取られる前後の映像がないのがやや残念です。

ストホーヴェン事件

2007年 / チェコ / ストホーヴェン

2007年6月17日、チェコの国営放送局のお天気カメラの映像がジャックされ、カメラの切り替えを装って風景の映像に閃光とキノコ雲が付け加えられた映像が流されました。この事件ではカメラと放送局の間に信号を割り込ませるという特殊な手口が用いられました。犯人は映像の中に堂々と宣伝URLを載せていたこともあってかすぐに分かり、公共の場でゲリラ的に活動を行う現代アート集団ztohovenのメンバーが逮捕され、実刑判決が下されました。上はジャックされる流れがわかるもの、下はジャックされた部分の高画質の映像です。

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